薬学生の「日常」

どっかの薬学部生による「日常」記録

有機化学について語る枠

 こんにちは!日本のどっかからお送りしております今回の記事は、私が愛してやまない「有機化学」に焦点を当ててその魅力を語っていきたいと思います!!(いつもより張り切っていきますよー 笑)

 

有機化学って?

 有機化学は、有機化合物、つまり炭素骨格を基盤とした物質についての学問です。ピンとこない人は自分の周りにあるものを見渡してみましょう。例えば紙、服やプラスチック、そして私たちの体のほとんど有機化合物によって構成されています。そんな日常に溢れるほどあるモノを体系的に扱える学問って、本当にワクワクしませんか?ここで一つの化合物の構造をお見せします!

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 これはペニシリンGで、抗生物質の仲間です。健気な構造をしてますよね!有機化学を学べば、構造を見ただけでこのペニシリンの性格(性質反応性)がわかっちゃいます!これが有機化学の醍醐味です!

 

具体的にはどんなことするの?

 一般的な有機化学では、まず原子の特性を踏まえて、構造を作った時にどのような役割を果たすかということを理解します。(電気陰性度や酸性度など)正直、これが一番大事な部分になるかと思います。あとは、官能基ごとにその反応性を理解し、実際にどんな反応があるのかを学んでいきます。

 しかし、私はこれだけが有機化学ではない、と私は言いたいです!特に薬学部での有機化学というのは、体を構成する分子(DNAやタンパク質など)を化学的に理解し、その反応性を考えるという部分が重要ではないかと考えています。

 ゆえに、前者の内容は主に薬を作るため、あるいは薬の性質を理解するという意味で重要であり、後者は薬のターゲットとなる私たちの体を理解するという意味で欠かせないということになります。どちらも習得することで、初めて真の「有機マスター」と言えるでしょう(笑)

 

大学での実際の勉強は?

  私の大学では、主に「スミス有機化学」という教科書を用いて進めていきます。

 

スミス有機化学(第5版)(上)

スミス有機化学(第5版)(上)

 

 

 

スミス有機化学

スミス有機化学

 

 

ですが正直どの教科書でも書いてあることはほとんど同じだと思います。(ただ、教科書によってレベルがあるので自分のレベルに合わせた学習がいいと思います。)

 自分の大学では2年生の後半から有機の基礎の基礎から始まりますが半年で一通り教科書を終えてしまいます。3年生になると、より複雑な有機反応や天然物の生合成や薬物代謝などより専門的な内容に入ります。しかし、これは2年生で学んだことを理解していれば全く難しくないです。(つまり、基礎が大事!!)

 

 また、有機の学習が他の科目でも活きてきます。例えば、分子生物学ではアミノ酸やタンパク質の構造、性質などを学ぶ機会がありましたが、タンパク質を構成する20種類のアミノ酸の構造を見ればその全体像は把握できちゃいます!

 さらにここから派生して、実際に薬物がどのように結合し、どのようにその薬理活性を示すのかということも薬物の構造、もしくは薬物のターゲット分子の構造から考えることが可能になります。これってめっちゃスゴイことじゃないですか?(この感動を分かち合いたい 笑)

 

 このように、有機化学はそれ一つが独立しているのではなく、様々な分野と相互に繋がっています。このような繋がりに気づく場面が多いことが、この薬学部ならではの特徴でしょう!

 

有機化学こそ薬学部の持つ武器!

 ここまでで有機化学の素晴らしさを存分に感じることができたと思います。(感じてないことないよね?)また、薬学部がなぜ有機化学を学ぶのかもわかってもらえたかと思います。

 ここで、声を大にして言いたいのは「有機化学こそ薬学部の持つ特権だ!」ということです。医学部やその他の医療系の学部では、ほとんど有機化学を学ぶことはないと思います。しかし、私たちにはそれを学べる。これこそ他の医療系学部と一線を画するところだと思います!このような点に惹かれたあなた!ぜひ薬学部に進学してみてはどうでしょうか?

 また、薬剤師にとっても有機化学の知識は有用です。薬の構造や薬理活性を分子レベルで理解し、そこから考えられる薬物相互作用を考慮しながら薬を処方する。このような確固たる理論に基づいた医薬品の提供が適切な治療に繋がると私は思います。(実際、ここまで考えているとは思いませんが 笑)

 

有機化学と日常生活

 じゃあ研究者や薬剤師以外は有機化学を学ぶ必要はないのか?と思ったことでしょう。実は全くそうではありません!実生活でも有機化学は大いに役立つこと間違いなしです!

 例えば、美容室で用いるパーマの還元剤、酸化剤はタンパク質のS-Sを切断、再形成することによって行います。また、料理などは有機反応のオンパレードです!(詳しくは調べてみてね 笑)このように、日常生活の何気ない現象を化学的に理解すれば、知識も深まります。しかし、もっと重要なのは、原理を理解して新たな工夫を施すことが可能になるということです。有機化学を用いて新たな創意工夫が生まれる、これって生活をより豊かにしてくれると思いませんか? 

 他にも科学リテラシーが身に付くというメリットもあります。最近はネットに眉唾物のエセ科学の記事が増えて、どの情報が正しいのかわからないことありませんか?しかし、有機化学を少しでも知っていれば「ああ、これ嘘じゃん!」となることが多くなるはずです!実際、なんだか小難しい構造式を提示された時、それとなく受け入れてしまいませんか?有機化学に親しんでいれば、本当にそれが正しいのかと考える、そのような姿勢が必ず生まれると思っています。(リテラシーを考える上ではこれが一番大切なことじゃないかな。)

 

最後に

 ここまで読んでいただけたら、有機化学がどれほど面白くてワクワクする学問であるかをお伝えできたのではないでしょうか?少しでも興味を持っていただければ、この上なく嬉しいです!

 

 今回は私の好きな言葉で締めくくりたいと思います。これはDNAの二重らせん構造で有名な James Watoson が残している言葉で、薬学部における有機化学を象徴した一言であると思っています。(これだけは皆さんにぜひ伝えたい!)

 

          Life is simply a matter of chemistry. 

         「生命とは単に化学の問題にすぎない。」